前回の続きです。
アメリカのRC情報サイト "Starting Grid" に掲載されていた、RCレーサーのステファン・ベスによる、エンジン慣らしの日本語訳です。
もしあなたがエンジン慣らしの際に、未だに『最低1タンクはアイドリング』を行っているのなら、あなたは "古典的慣らし方法" を行っていると言えるだろう。しかし、その方法はエンジンの扱いに長けた上級者達 - Top Engine Guys: ロン・パリス、デニス・リッチー、ロディー・ローム、マイケル・サルバン等 - が推奨する慣らし方法ではない。
アメリカのRC情報サイト "Starting Grid" に掲載されていた、RCレーサーのステファン・ベスによる、エンジン慣らしの日本語訳です。
もしあなたがエンジン慣らしの際に、未だに『最低1タンクはアイドリング』を行っているのなら、あなたは "古典的慣らし方法" を行っていると言えるだろう。しかし、その方法はエンジンの扱いに長けた上級者達 - Top Engine Guys: ロン・パリス、デニス・リッチー、ロディー・ローム、マイケル・サルバン等 - が推奨する慣らし方法ではない。
具体的には、初めてエンジンを始動する時から車体を地面に置き、駐車場等で2~3分間のインターバル走行を行う。ニードルセッティングは "わずかに開く" のみとし、晴天日でヘッドの温度が93度付近になるよう走行する。2~3分間走行した後は毎回エンジンを止め、ピストンの位置が下死点にある事を確認して、エンジンの冷却を確実に行う。その後、再度エンジンを始動し、2~3分間走行する。このサイクルを、合計走行時間が15分程度となるまで行う。
このサイクル終了後、走行時間を3~4分間に延ばして同様のインターバルで走行する。エンジン回転数も上がり始めるが、エンジンヘッド温度の上昇(93度付近)を恐れてはいけない。するべき事は、エンジン部品に正しい "ヒート・サイクリング" を与える事であり、開きすぎたニードル設定に起因する熱不足から生じる過度のストレスを与えることではない。この方法で合計20~25分走行させる。これでエンジンはレース調整用に用意され、エンジン慣らしは完了となる。
この方法は、いわゆる "古典的慣らし方法" と言われる、アイドリング状態でスターターボックスに置く方法とは対極に位置する。しかし、一度この方法でエンジン慣らしを完了すると、そのOSエンジン(注: 原文ではOSとなってました。)の上死点におけるピストンとスリーブの当たり具合は驚くほどきついが、しかし止まらない。加えて "古典的慣らし方法" よりもエンジン圧縮がより長く持ちこたえる結果に驚く事になるだろう。
エンジン始動後、最初の5タンクを "ニードル出荷時設定" で走行する事。それはエンジンに多大なストレスを及ぼす事になる。何故なら、過去に私が保有したOSエンジンのニードル出荷時設定は開きすぎているからである。結果、スリーブは熱膨張する事無く、エンジンを始動すればピストンは上死点における、スリーブとの擦れ合い箇所で毎回激しく衝突し、そして - 驚くべき事では無いが - 最もエンジンストレスが掛かるコンロッドのクランクピン近傍にクラックが発生する事になる。私は、6~8台程の壊れたOSエンジンの話を聞いたが、それは常に最初の1ガロン(3.9リッター)で発生している。そして、ほぼ毎回 "古典的慣らし方法" にてエンジン慣らしを行っている。何故それが起きるのかは別に不可解な事ではない。
エンジン慣らしとは、実際にはエンジンにストレスを与え、エンジン圧縮を摩耗させる事と言える。私が書いたエンジン慣らし方法は一見おかしいと感じるかもしれない。しかし、一度試してみると、エンジンパフォーマンスとその耐久性の大きな違いに気付くだろう。
思い切ってこのエンジン慣らし方法をやってみて、あなたが更なるエンジンパワーと耐久性を手に入れる事を望む。
本人も述べるように "OS式" とは全く違う方法ですね。従来ではやってはいけないと言われている手法(ニードル閉めすぎ、いきなり走行、すぐさまエンジン温度90度以上などなど。)で慣らしをしています。この方法の要点は、開きすぎたニードルはエンジン温度の上昇を妨げ、ピストンとスリーブの擦り合わせが上手く行かないので、ピストンスリーブが開くまで正しい入熱を行い実走行による慣らしを行う事、と言えるかと思います。いきなり走行させるのも、静止状態では走行風による正しい冷却が得られないからでしょう。
話を実車のエンジンに変えますが、以前私が保有していたR33 GT-R (RB26DETT) は、あるトラブルでピストン、コンロッド、クランクシャフトからブロックまですべて交換したのですが、その際HKSの制御コンピュータ F-CON V proに変更しました。エンジンチューンは金色の車で有名な千葉の某店でした。エンジンが出来上がって、まず、最初に言われたのは『1000kmを回転数3000以内に抑えて慣らしを行い、当りがついたところでオイル交換後F-CONの最終調整を行います。』という事。また、慣らし時には混合気をワザと濃くしてエンジンに過度な負担が掛からないようにしているとも言われました。実際に慣らしの最中で、エンジンを止める際にアクセルを吹かして、回転数が落ちる時にエンジンを止めるという行為をサボった時にはプラグが被ってしまい、クランクを空回ししてガス抜きをしないとエンジンが始動しない事が多々ありました。もちろん、4スト・ピストンリング式のエンジンを積む実車の話をラジコン用エンジンに当てはめるつもりもないのですが、実車例として。
どのエンジン慣らしが一番良いのか、という結論は出せませんが、ホビー用エンジンは実車とは違いますし、どちらかと言えば私は一流レーサーも認めるステファン・ベス推奨の方法が好みです。つまり、ピストンスリーブが開くまでエンジン温度を上げて、ピストンとの擦り合わせを行い、走行する事により実負荷をかけ冷却も得る。開き過ぎたニードルはエンジン温度の上昇を妨げピストンスリーブが開かず、その結果、各部品に過大な負荷を掛け最悪の場合破損の恐れもある・・・。
ロディー・ロームも認めるこの方法ですが、ロディーはRBの創始者なので若干というかかなり矛盾がありますね・・・。しかし、まぁ論理がすっきりしていて解り易いですし、特に問題があるとも思えません。ちょうど、新品OS 21VZ-B V-Specがありますので、(値段が高いだけに・・・)怖い気もしますが、この方法を試してみてまた報告します。
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